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便利に使える資料付き! 外国人受け入れ時におさえておきたい住まい手配の注意点

外国人の住まい手配Tips

日本の労働力不足が深刻化する中、政府は2019年に新たな在留資格を創設。外国人労働者の受け入れ拡大に大きく舵を切りました。“すでに「外国人受け入れ大国」”[*1]と指摘される日本で、重要になるのが外国人従業員の住居の確保です。

国際化が進む一方で残念ながら日本では、外国人の住まい探しが難航し頭を悩ます企業担当者は少なくありません。この記事では、外国人従業員の住まい探しを担当することになった人事・労務・総務担当者の「どんな準備が必要?」「家はどうやって探すの?」「どんなサポートができる?」という疑問にお答えします。

目次

    住まい探し前の5つのチェック項目

    滞在条件

    在留資格には様々な種類があり、資格により活動できる内容や在留期間が異なります。用意する家の形態や契約期間に大きく関係するので、採用や法務部、配属先部署など各担当者に確認をしておきましょう。

    同居予定者

    「家族滞在」などの在留資格で、外国人従業員と同居を希望する家族がいる場合があります。どれくらいの居住スペースが必要なのかや適したエリアは、住まい選びに欠かせない情報です。帯同は何名か、学校に通う子どもはいるか等、同居予定の家族構成を確認しておきましょう。
    また、個人間の居室のシェアや同居者の入れ替わりが一般的に行われている国もあるため、事前に本人に日本の法律や文化を説明しておくのもいいでしょう。

    入居予定日

    来日のタイミングと物件の入居可能日が一致するとは限りません。希望物件の入居開始日が来日の数ヶ月先だったり、入居予定日が確定しないと紹介してもらえる物件が限られたりする場合があります。不動産会社と交渉、マンスリーマンションなどの仮住まいを手配する等の対策が考えられるので、事前に見通しを立てておくのがいいでしょう。

    身元確認書類

    希望の物件が見つかった後に待っているのが、入居審査です。入居審査では、住まいを貸す側が物件を安心して貸せるかを経済力や「トラブルを起こさないか」等が伺える資料から判断します。法人契約して社宅として住まいを用意するか、従業員個人の契約をサポートするのか、誰が審査を行うか等で詳細は異なります。ここでは、提出を求められることが予想される入居希望者本人の身元確認書類の例をおさえておきましょう。

    名称概要
    パスポートパスポートは身分証明書であるとともに、所持人の本国政府による 「渡航許可書」です。
    在留カード日本に90日以上の中長期滞在が許された外国人に対し、法務大臣が交付するICカードです。
    勤務証明書勤務先が在職していることを証明する書類です。
    収入証明書給与支払い(予定)の証明書・預貯金の証明(通帳の写し) 等
    勤労資格証明書我が国に在留する外国人からの申請に基づき、その者が行うこと ができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を 法務大臣が証明する文書です。
    [*2]「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001265432.pdf)を加工して作成

    契約の債務保証

    賃貸住宅の契約をする際、一般的に連帯保証人または家賃債務保証を求められます。家賃債務保証とは、保証会社が連帯保証人に近い役割を果たす制度です。入居の円滑化のため国土交通省でも、業者の登録制度を設けるなど家賃債務保証の活用について整備を進めています。外国人の言語対応サポートを行っている家賃債務保証業者もあり、受け入れ企業にとって債務保証の有力な選択肢になるでしょう。

    また、「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」で以下のように紹介されている通り、債務保証を設けることが一般的でない国も多くあります。ルールを事前に説明し、保証人探しや契約内容の理解につなげましょう。

    日本の民間賃貸住宅における賃貸借契約は、通常、借主の債務保証を必要としますが、国によって賃貸借契約において保証を必要とせず、家賃滞納等の契約違反があれば、速やかに賃借人に退去を求めることができる国もあります。そのため、日本における保証の必要性をあらかじめ伝え、外国人の保証が受けることができる家賃債務保証業者を利用するか、連帯保証人をたてるよう伝えましょう。

    [*3]「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001265432.pdf)

    どう探す?外国人の住まい

    一般的な仲介業者を利用して入居可能な物件かを都度確認するほか、外国人フレンドリーな媒体や業者からアプローチする方法があります。支援制度を設けている自治体もあるので、確認してみるといいでしょう。

    外国人の住まい探しの方法例

    • 外国語の新聞・雑誌等のメディア
    • インターネット上の外国人向け住宅検索サイト
    • 外国人に特化した不動産仲介業者

    外国籍であることを理由に入居を断ることは法律や国際条約に違反しますが、条件を総合的に鑑みて入居審査に通らなかった場合は違法にはあたりません。文化の違いや言語の壁、家賃回収への不安から抵抗感を持つ貸主が少なからずいるのが現状です。出入国在留管理庁の調査では、違法である「国籍を等を理由に断られた」との在留外国人の回答が20.5%[*4]にものぼりました。

    [*4]「令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の概要」(法務省)(n=1600)

    前もって外国人の住まい探しに慣れた業者や相談先を確認しておくと、スムーズかもしれません。

    文化の違いに注意!外国人が馴染みやすい住まい選びのコツ

    日本には住まいに関する独特な決まりや慣習があり、文化の異なる外国人から驚かれたりトラブルに発展することも少なくありません。母国では当たり前のことが日本ではそうでないことも多く、外国人従業員本人では事前に気がまわらないことも考えられます。地域に馴染みトラブルのない住まい選びを叶えるため、配慮すべきポイントをおさえましょう。

    商慣習

    日本の家賃や契約金額を高いと感じる外国人は多く、敷金、礼金、更新料、原状回復などの費用も諸外国では一般的ではありません。「不当に騙されている」といった誤解や、勘違いしたまま後々トラブルになることを未然に防ぐため、口頭だけでなく数字などを用いて説明しておきましょう。

    宗教

    宗教を信仰する人は日本に比べ多く、宗教ごとに慣習が異なり価値観も様々です。宗教上の理由で、礼拝堂や専門の食材を扱う店の近いことに利便性を感じたり、コミュニティが形成された地域に安心感を抱いたりするケースが考えられます。

    コミュニティの有無

    同じ国籍や境遇ごとにコミュニティが存在しているエリアがあります。同国人と情報を共有でき、近隣住民の理解も進んでいることから、入居後の暮らしがスムーズに運びやすいと言えるでしょう。

    教育

    外国人従業員がお子さんを伴って来日するケースでは、教育の機会と権利に配慮する必要があります。希望の教育環境を事前に確認し、通学可能な範囲の住まいを用意することに留意しておくといいでしょう。

    文化・慣習の違いをふまえて本人の希望条件を聞くと、認識を合わせた住居選びが可能です。外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居を推進する国土交通省では、「希望条件チェックシート」[*5]を用意しています。条件の確認や物件選びにぜひ活用しましょう。

    住み始めてからの退去・トラブル防止策

    所変われば慣習も変わります。中でもゴミ出しと生活騒音はトラブルの元になることが多く、丁寧な説明が必要です。

    [*6]稲葉佳子(2008)「公営住宅における外国人居住の実態に関する研究」 都市計画論文集 No43-1

    ゴミの種類ごとの分別や回収曜日の違い、粗大ゴミの出し方等については、自治体が外国人向けの資料を用意していることも多いので利用するといいでしょう。日本の集合住宅では隣接する居室に音が伝わりやすいので、楽器の演奏や大勢でのパーティー、時間帯への配慮等を理解してもらう必要があります。

    また、異国での生活は戸惑いがつきものです。電気・ガス・水道料金の支払いやかかりつけの病院・施設探しなど、暮らし始めてからも困りごとは多いでしょう。自治体や業者のサービスなど、相談窓口を案内しておくとお互いに安心できるかもしれません。

    まとめ

    外国人を受け入れる企業・組織は増えている一方、差別や偏見で物件がなかなか見つからなかったり、文化の違いによるトラブル対応に見舞われたりする事例は多く聞かれます。受け入れ企業がサポートすることは、優秀な海外人材を獲得する上で大きなアドバンテージとなります。

    海外人材や教育機関、受け入れ企業・団体に多くのネットワークとノウハウを持つSUGEE Housingでは、外国人の住まい探しを支援。ご要望に合った住まいのご紹介から契約、居住マナーのレクチャーまでワンストップでご提供します。

    出典

    [1]株式会社日本総合研究所 調査部 副理事長 山田久,“特集 外国人材の望ましい受け入れに向けて」1章 急増する外国人労働者とどう向き合うか-望ましい受け入れの条件-”,JRIレビュー 2019 Vol.10, No.71,https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/11444.pdf (2019.11.19)

    [2]「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001265432.pdf)を加工して作成

    [3]「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001265432.pdf

    [4]令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の概要」(法務省),179p図表124(https://www.moj.go.jp/isa/content/001342229.pdf

    [5]「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」資料編「希望条件チェックシート」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001314816.pdf)

    [6]稲葉佳子(2008)「公営住宅における外国人居住の実態に関する研究」都市計画論文集 No43-1,https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/43.1/0/43.1_66/_pdf

    [7]「【英語訳】ごみのマナーABC(ごみの出し方)ABC of Waste Disposal Rules 5」 (大阪市)(https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000524/524768/R3_EN_P_P5.pdf

    参考資料

    1. 外務省,“在留資格 特定技能”,https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/index.html
    2. 法務省,“平成28年外国人住民調査報告書 – 訂正版 -”,https://www.moj.go.jp/content/001226182.pdf
    3. 出入国在留管理庁,“在留資格一覧表”,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html
    4. 「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」 (国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/001265432.pdf
    5. 「家賃債務保証業者登録制度」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000024.html
    6. 最高裁判所“下級裁判所判例集”,(平成19年10月2日京都地裁判例)https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=35320
    7. 「国際人権規約(社会権規約)」第2条、第11条1項,(外務省)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2b_001.html
    8. 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」第2条、第5条(d)項(i)、(e)項(iii)(外務省)(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html
    9. 「令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の概要」(法務省)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001342229.pdf
    10. 著.稲葉佳子,「外国人の民間賃貸住宅入居支援策に関する考察」,Journal of the City Planning Institute of Japan, No. 40-2, October, 2005,https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/40.2/0/40.2_63/_pdf/-char/ja
    11. 著.鈴木雅智・新井優太・川井康平・清水千弘,東京大学空間情報科学研究センター「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納」,2020年8月29日,https://www.csis.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2020/09/168.pdf
    12. 文部科学省総合教育政策局国際教育課「外国人児童生徒等教育の現状と課題」令和3年5月(文部科学省)https://www.mext.go.jp/content/20210526-mxt_kyokoku-000015284_03.pdf